手抜き投資改めご都合主義の期待売買

結果だけに一喜一憂するご都合主義の期待売買

伝説のバックスプレッダーAC氏の手法は聖杯なのか

昨夜も眠りにつきながら聖杯の事を考えていた。

バックスプレッドで一躍名を馳せたAC氏のブログ「ボラがほほ笑むから」を見直してみる。

AC氏の事を知ったのはだいぶ前である。10年程度になるだろうか。

当時すでにバックスプレッドは有名になっていたので自分で色々とシミュレーションしてみたのだが、そうそう儲かるもんでもないな、という印象だった。

AC氏は継続的に利益を積み重ね当時ですでに億超えだった。最近は月ごとや年ごとの損益がのっていないようなので定かではないが二桁億はいっていても不思議ではない。

※改めて読み直してみたところ、ここ数年はあまり調子がよくなさそうである。

では、AC氏が特別な手法を使っているのか?聖杯を持っているのではないか?ということが本日の主題である。

この点、ブログを丹念に読み返しても特に聖杯めいたものは見当たらない。勿論聖杯を持っていたとしてそれをタダで公開するわけもない。

少しでもヒントめいたものがあれば万々歳というわけである。

何事もマネから始まるというではないか。

AC氏は具体的なポジションやリスク指標などを毎日公開されているのだが、それだけ見ても勿論分からない。

ときたまカレンダーを組んだとかカバードコールになったなどが書き込まれているのみで、IVが上がったらボラを売るとかで具体的には何をどうやっているのかは分からない。ボラを売るにしてもコールなのかプットなのかで違いがあるし、ヘッジをどれでいれるかとか、カレンダースプレッドにするとかおよそ無限と言っていいほどの組み合わせがあるだろう。

そこで過去の損益から判断してみると、大きく損失を出している月もある(例えばリーマンショックでは1月で5000万ほど)。となるとやはり聖杯ではないということなのだろう。

少なくとも下手をすると損失を出すリスクをとった手法であると言える。

また、コメント欄などに質問などが多く寄せられており、それらを読んでみるとオプションがある程度分かっている人間でさえ一読しては良く理解できないようなことも書いてあり、そういう意味では場当たり的な価格当てゲームでもないことも推測できる。

一般的にオプション取引に慣れてくると(敢えて中級者とは言わず)、絶対的に優位性のあるポジションを探しがちである。言わばオプションの聖杯である。

そしてああでもないこうでもないとオプションシミュレーターなどでシミュレーションしまくり、やっと見つけた戦略がまったく予想外の動きをしたりして冷や汗をかく事多しである。

そもそも予想外の動きをする、という事自体おかしな話でそれは詰まる所オプションがよくわかっていないからに他ならない。

分かっているようで分かっていない、分かったつもりになっているという感じだろうか。

表面的にはコールとプットの違いは分かっているだろうし、デルタやベガも分かっている。時間的価値も知っている。なのになぜ想定外なのか?

恐らくそれはシミュレーターのマジックである。いくらIVを変化させたり、残存日数を変えたりしてもすべてのパターンを表示させ、かつ、自分が見て、それを記憶させることなどできないのだから当たり前と言えば当たり前である。

要はシミュレーターに頼り過ぎていると言えるかもしれない。

結局のところそのポジション、戦略がどのように動くのか自分自身がきちんとイメージできていなければいけないということになる。しかし、それが本当に正解なのか?

自信を持ってそう言えるためにはやはりかなりの知識と経験がいるだろう。

しかし、市販されているオプションの教科書のほとんどが役に立たない。恐らくこの意見にはほとんどのオプショントレーダーが同意するだろう。

書かれていることに間違いはないが、それが実戦では役に立たない。

そういう意味ではAC氏はかなり勉強されたことが推察される。

元々AC氏は商品先物を主戦場としていたらしく、そこでも億超えだったようだ。商品先物がやりにくくなったためにオプションに移ったということで、もともとオプションと相性が良かったのだろう。商品先物もサヤを抜くゲームであるし、オプションはサヤ取りであるという人もいるくらいである。

仮にAC氏が聖杯を持っていないとすると、ごくオーソドックスなオプションのスプレッド売買を駆使して収益を上げ続けていることになるわけだが、それはそれで聖杯とは言えないだろうか?

例えばバックスプレッドも別にAC氏が編み出した手法ではなくもともとあるものであってそれはたまたまAC氏が世に広めただけである。しかし、そのバックスプレッドの表面的なポジション構成だけをみると私のようにこれは聖杯ではないと思う人が大多数だろう。なのになぜAC氏が莫大な利益をあげたかと言えばそれは単に運が良かっただけと思う人も多いかもしれない。

そこでブログを読み返してみると、バックスプレッドと言いながら単純なバックスプレッドにとどまらない仕掛けが用意されていることが分かるのだが、ほとんどの人はそこまで気づかない。そしてバックスプレッドをやって損失を出してしまう。当たり前だがバックスプレッドは聖杯ではない。

そうすると、バックスプレッドをたまたまやってそこでたまたま利益が出ただけと考えがちである。実際バックスプレッドをやって一気に何千万も儲かった人もいる。しかし、バックスプレッドをやり続けても利益を継続的に積み重ねられない。むしろ損失を積み重ねることが多い。ピンポイントで仕掛けて利益があげられればそれに越したことはないが、それこそ価格当てゲームであってその価格を当てることができればなんだって儲かるに決まっている。

となると、バックスプレッド自体は聖杯ではないとしてAC氏はそれを使って利益をあげかつトータルでも利益を上げ続けているのはなぜか?たまたまピンポイントであてただけなのか?仮にたまたまだったとして外している場合もあるだろう。トータルで大きく利益がでていればそれはそれでいいわけ、それを生かす戦略全体は聖杯と言えるのかもしれない。

オプションの場合はとかく絶対無敵のポジションを夢想しがちであるが、絶対無敵のポジションでなくオーソドックスなポジションであってもやりようによっては継続して利益がでるということの証左でもあるだろう。

そもそもオプションの利点は一旦建てたポジションでもリスクが調整可能な点である。

にもかかわらず含み損が大きくなると慌てふためき損切り上等とばかりに損切りしなくていいポジションであるにも関わらず損失を確定してしまう。

逆に調整可能だとタカをくくって調整できずに損失を拡大させてしまったりする。

そう考えると、結局はその人の技量に左右されることになるのでやはりその聖杯はその人の聖杯であり、一般化できない聖杯だということになる。

とは言え、その人の聖杯にもロジックがあるはずであり、そのロジックは一般化できるはずである。

勿論、その打ち出の小槌であるロジックを教えてくれるはずもなく自分で見つけなければならない。

聖杯探しの旅はまだまだ終わらないようだ。。。